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 大村亘 ドラマー/作曲家 


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インドでのちょっとした思い出

『そもそも何故インドに行き始めたんですか?そして、何故行き続けるんですか?』

よく聞かれる質問です。
長い歴史を持つタブラの言語を習得したい。
が主な理由ですが、他にもあります。

僕が渡印する前の2012年は震災からの一年後、ここでわざわざ言葉にしなくても、多くの人々にとっては不安に苛まれながらも前に進むしかないという時期だったのではないでしょうか。単純に言葉では語れないわだかまりが社会全体に渦巻いてた様に記憶しています。

その時周りからよく耳にした不安や不満の言葉に自分の精神が疲弊していくのを露骨に感じていました。
このままではまずいなと、環境を変えなければ蟻地獄に吸い込まれてしまう、という感覚でした。
誰のせいでもなく、上記の渦巻いていた何かに。

インドに出向くようになり色んな事が起きました。
日本での仕事を沢山断ってでも行き続けようと思うようになりました。
そもそも、演奏して稼ぐ『仕事』ってなんだろう?
と自問するようにもなりました。

現代は経済的な歯車で社会が回っているので、共通価値のお金を無くしては自由に行動出来ません。
なので、人は自由と時間を勝ち取る為に自由と時間を犠牲にしながらでもお金を稼ごうとするのかもしれません。

そんな滑稽な矛盾は現代人の誰しもが抱えていて、僕も例外ではありません。
それに思わぬ形で気付かされるわけです。

とあるムンバイでの出来事に。

ムンバイにあるハコで殆どギャラの出ない演奏をお願いされる様になりました。
国際的に様々なミュージシャンが出入りするのですが演奏レベルは千差万別です。
演奏技術が乏しい人は乏しい、素晴らしい人は文句なしに素晴らしい。必然的にその晩の音楽的内容はちぐはぐになる事もあります。レベルのスペクトラムの振り幅が広いが故に。
それは思っている以上にチャレンジングな事で、上手い人達や、自分とセンスが似通う人達と一緒に演奏するより遥かに難しいのです。
それでもそのハコの仕切り主さんは、
『今日も聴きに来てくれた人の魂の洗濯が出来たね。』と微笑んでいました。
この時、個人的にはその言葉を素直に受け止めれませんでした。
音楽的な内容が自分の思う理想に近いもの、又は程遠いものと混沌としていたからです。

そんな彼にとある日曜日の午後お誘いを受けました。

『スラムの子供達に音楽を教えてるんだ、君も来ないか?君が彼らに伝えたいリズムなりなんなり自由にやってみてくれ。』

戸惑いましたが、出向きました。

そこには4人のスラム出身の男の子達が待っていました。
とりあえず、シンプルなリトミックみたいな事を始め、色んなフレーズを少しずつ発展させながらキャッチボールするような形で音遊びが始まりました。
その時のその子達の澄んだ瞳と、音楽が楽しくてしょうがないという表情ほど溌剌としたオーラは後にも先にも見た事がありません。
瞬く間に2時間近くが過ぎ、満面の笑顔でお礼をされ彼らはスラムへと帰って行きました。

後で彼らの父は1ヶ月、アメリカドルで$100に満たない月給で一家を支えている事を知りました。
そんな中で音楽が彼らの心の中で踊り、その一瞬一瞬を楽しみ、なんとも形容出来ない見た事のない純粋なそのエネルギーに、逆に自分の魂が洗濯された感覚を覚えたのです。

数日前、自分の小さな音楽的理想像の為に、『人の為に音を届けるとは何か』という本質的なメッセージに気が付いて居なかった自分に気付かされるわけです。

芸術的な理想や、この世での名声、評価は全て一過性のもので、如何なるものでも主観に囚われる事で大切な何かを見落としてる事もあるんですよ、とインドはその子達の素直な笑顔を通してそっと囁いてくれたのかもしれません。

『スラムの子供達に教えないか?』

いや、最初から僕の方が教わる立場だったんです。
インドってそんな事ばかり起こります。

なので、来年もフラリと行ってきます。


by koomuraa | 2018-12-07 13:01 | Trackback | Comments(0)
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